ソウルとかイカスミとか名乗ってる人が書きたいことを書きたいときに自由に書いてるブログ

初等数学で最初にやったこと

お久しぶりです。デザイン変えました。

ブログ放置するくらいなら別に専門性がなくても自分の学習したこととかのまとめなどをし(、あわよくばガチプロの方々からの指摘や派生知識を授かり)た方がいいと思いました。アフィカスブログ扱いされませんように

 

恐らく多くの人は次のようなことを思ったことがあるのではないでしょうか

「何故マイナスにマイナスをかけるとプラスになるのか」

もしかしたらこれが原因で数学が躓いた人もいるのかなとも思います。

自分も高校生の頃はきっと高度な数学を使って証明するんだろうなと思っていました。

 

大学に入って、

こんなことは高等数学でも哲学でもなんでもない、定義から直ちに導けること

だと思い知らされました。現実は厳しい。

今回はこのことについて自分の知識の整理のために書いていきます。

ここに書いてあることが全て正しい保証はないのでちゃんとした学習の際にはあまり参考にしないでください。間違いがあったらご指摘お願いします。

なお、今回からMathJaxによる数式のTeX表記を試験導入しています。環境によっては表示がおかしくなるかもしれません。

追記:どうやらスマホ表示だと正しく表示されないようです(サイドバーにjsを埋め込んでいるから?)。スマホに埋め込もうとするとProにしないとダメっぽいのでお手数ですがこの記事はPC表示で見てください。記事にjs埋め込むことで解決しました(多分)

初めに

そもそもとして、この手の議論をするとき、上記の文だけだと不十分です。

というのも、

  • マイナスというものがどのように定義されているのか
  • 第一、これは何上での話なのか

という前提条件が曖昧すぎるためです。

まずは、これらをはっきりさせる必要があります。

群・環・整域・体

皆大好き、群環体のお話です。

といってもそんなに複雑なことには踏み込まず、今回必要な導入部のみを軽く触れようと思います(自分が群論などをあまり理解していないのもある)。

面倒な人は次の諸性質まで飛ばしてもらって結構です。

演算子

群環体を定義するには演算子が必要です。

Gを集合としたとき、Gの元a,bに対し$a \phi b$なるGの元が定まっているとき、この$\phi$を演算子といいます。

つまり、

\[ \phi \colon G^2 \ni (a,b) \mapsto a \phi b \in G \]

という写像です。

わかりにくいかもしれませんが、我々に馴染み深い+,×も演算子の一種です。

Gを$\mathbb{R}$*1、$\phi$を+,×と置き換えれば普段我々が使っているような感じになるのではないでしょうか。 

 

以下では、Gを集合とし、Gの任意の元$a,b$に対し$a \phi b$なるGの元が定まっているとします。

群(アーベル群)

Gと$\phi$が次の1~3を満たすとき、$(G,\phi)$あるいはGを群と、

さらにGと$\phi$が次の1~4を満たすとき、アーベル群(可換群)と定義します。

  1. (結合法則) 任意のGの元$a,b,c$について、$(a \phi b) \phi c = a \phi (b \phi c)$
  2. (単位元)あるGの元$e$が存在し、任意のGの元$a$に対し、$e \phi a = a \phi e = a$を満たす。
  3. (逆元)任意のGの元$a$に対し、あるGの元$a'$が存在し、$a \phi a' = a' \phi a = e$を満たす。
  4. (交換法則)任意のGの元$a,b$に対し、$a \phi b = b \phi a$

G=$\mathbb{R},\mathbb{Z}$*2などで、$\phi$が+ならば単位元は0で$a$に対する逆元は$-a$、といった具合です。

なお、この定義から単位元,逆元は(それぞれ群,元ごとに)ただ一つしか存在しないことも示せますがここでは省略します。

環(可換環)

以下、Gの任意の元$a,b$に対し和$a+b$と積$a・b$が定まっているとします(+,・は演算子)

Gが次の条件を全て満たすとき、Gを環*3と定義します。

  1. (和) (G,+)がアーベル群である。
  2. (積) (G,・)がアーベル群の定義のうち、3(逆元)以外を満たしている。

このとき、和に関する単位元を零元、積に関する単位元単位元と呼び、それぞれ0,1と書く場合が多いです(Gが$\mathbb{R},\mathbb{Z}$などの場合、これら0,1は我々が日常生活で使っているものと同じです)。当然、それぞれについて一意性が簡単に示せます。

整域

Gが環であり、かつ次の2つを満たすとき、Gを整域と定義します。

  1. Gの元$a,b$について、$a・b=0 \Rightarrow a=0 または b=0$
  2. $0 \neq 1$

Gが環であり、かつ次の2つを満たすとき、Gを体と定義します。

  1. Gの任意の零元でない元$a$に対し、あるGの元$a'$が存在し、$a・a' = a'・a = 1$を満たす。
  2. $0 \neq 1$*4

なお、体$\Rightarrow$整域です。(逆は成り立たない)

諸性質

さて、これで0,1の定義ができました。また、マイナスの定義も

「各元(正)に対する、和についての逆元*5

とできます。

また、何上での話かについて、高校まででよく使うのは$\mathbb{N}$*6,$\mathbb{Z}$,$\mathbb{Q}$*7,$\mathbb{R}$,$\mathbb{C}$*8ですが、恐らく一般的に使われるのは$\mathbb{Z}$か$\mathbb{R}$だと思うのでここでは$\mathbb{Z}$ということで話を進めます($\mathbb{R}$でも同様に議論できます)*9

これで議論の前提を整理できました。

そして環の定義から次の4つが導けます。($a \in \mathbb{Z}$)

  1. $0a=0$
  2. $(-1)a=-a$
  3. $-(-a)=a$
  4. $(-1)(-1)=1$

ここで注意すべきなのが、これらは簡単に導けるというだけで定義ではない(つまり証明すべきこと)ということです。

つまり、0をかけると0になるも自明じゃありません(個人的にはこっちの方が話題になってほしい)。 

また、マイナス×マイナス=プラスの性質も3つ存在します*10

証明

これ以外にも証明があり、そっちの方が単純でわかりやすい場合があります。あくまで証明の一例として見てください。

また、証明に用いた性質がどこで用いられているかは(やる気と技術力不足により)省略しています。

・$0a=0$

$\begin{eqnarray}0a & = & (0+0)a\\ & = & 0a+0a\end{eqnarray}$

より、

$\begin{eqnarray}
& 0a & = & 0a+0a\\
\Leftrightarrow & 0a+(-0a) & = & 0a+0a+(-0a) \\
\Leftrightarrow & 0 & = & 0a
\end{eqnarray}$

・$(-1)a=-a$

$\begin{eqnarray}(-1)a+a & = & (-1)a+1a \\ & = & (-1+1)a \\ & = & 0a \\ & = & 0\end{eqnarray}$

よって(-1)aはaの逆元である。

・$-(-a)=a$

$\begin{eqnarray}-(-a)+(-a)& = & (-1)(-a)+1(-a) \\ & = & (-1+1)(-a) \\ & = & 0(-a) \\ & = & 0\end{eqnarray}$

よって-(-a)は-aの逆元である*11

・$(-1)(-1)=1$

$\begin{eqnarray}(-1)(-1)+(-1) & = & (-1)(-1)+1(-1) \\ & = & (-1+1)(-1) \\ & = & 0(-1) \\ & = & 0\end{eqnarray}$

よって、(-1)(-1)は-1の逆元である。

最後に

これでマイナス×マイナス=プラスが示せました。

執筆途中に軽くググったところ直感に頼りきりであまり論理的でない説明のもの*12が1ページ目に多くでてきてあんまり論理的な説明は広まってないと実感しました。この記事がわからなくてもこれが論理的かつ容易に証明できるという事実だけでも知っておいてほしいです。

今後も気が向いたらこんな記事書いていきます。よろしくお願いします。

 

シャニマスでW.I.N.G優勝できない,リフのサイガガS寸した

*1:実数全体の集合

*2:整数全体の集合

*3:文献によっては交換法則を要請しない(この場合、交換法則を要請する定義のものは可換環と呼ぶ)場合もあります。

*4:逆に0=1になるような体モドキが存在するのかというのはG={0}で体の定義を確認すればわかると思います

*5:元が負だと逆元は正になるので範囲を制限する必要があるけど「正の元」という言い方をあまりしないのでこの言葉を使っていいのか怪しいためここではこういう表現にしました。誰か日本語教えて

*6:自然数全体の集合

*7:有理数全体の集合

*8:複素数全体の集合

*9:$\mathbb{Z}$は整域で$\mathbb{Q},\mathbb{R},\mathbb{C}$は体、$\mathbb{N}$は群ですらない

*10:自分が見た本だと大抵この3つです。(-a)(-b)=abだけじゃダメなんですかね?いずれにせよこの3つが示せれば$\mathbb{Z}$が可換環であることから簡単に(-a)(-b)=abも示せるので問題ないです

*11:逆元の定義から、-aの逆元はaとなります

*12:あくまで中学1年に説明する前提だったので理に適っていると思います。中1にこれで説明してもまずわかってもらえない